質点系の角運動量・モーメントに関する定理まとめ
質点系の角運動量とモーメントに関する定理は数が多いので、ここで整理したい。
定理1
質点系の角運動量は、重心の角運動量と重心に対する質点系の相対的な運動の角運動量の和に等しい。
を質点系の角運動量、を重心の角運動量、を重心に対する質点系の相対的な運動の角運動量とした。
証明
定理自体の証明の前に、重心に関する定理を紹介しておく。質点の静止座標系における位置ベクトルを、 重心の位置ベクトルをとし、重心を原点とする並進座標系1における質点の位置ベクトルをとする。つまり、
となっているとする。 このとき
が成り立つ。これが重心に関する定理である。証明は以下の通り。
式(3)について、式(2)より
とした。ここで、
より
式(3)が示された。式(4)も全く同様に示される。
さて、この重心に関する定理を踏まえて定理1を証明していく。 式(1)(2)より
上の第二項と第三項は式(3)式(4)よりゼロとなる。故に、
定理2
質点系の外力のモーメントは、重心に全外力をかけたモーメントと重心周りの外力のモーメントの和に等しい。
を質点系の外力のモーメント、を重心に全外力をかけたモーメント、を重心周りの外力のモーメントとした。
証明
定理3
質点系の角運動量の時間変化は外力のモーメントに等しい
証明
第一項はゼロ、第二項は質点に関する運動方程式
(質点にかかる外力を、質点に質点からかかる内力をとした。) より書き換えられ、
上の第二項目について
作用反作用の法則
より
より第二項はゼロになる。 故に
定理4
重心の角運動量の時間変化は重心に全外力をかけたモーメントに等しい。
証明
第一項はゼロ、第二項の右側は質点系の運動量の時間変化に等しく、よって外力の総和に等しい。
定理5
重心に対する質点系の相対的な運動の角運動量の時間変化は重心周りの外力のモーメントに等しい 重心原点の並進座標系上では慣性力を考えずに定理3の式を立てることができる。
証明
定理1、2、3より
定理4の式と辺々ひいて
まとめ
:質点系の角運動量、:重心の角運動量、:重心に対する質点系の相対的な運動の角運動量
:質点系の外力のモーメント、:重心に全外力をかけたモーメント、:重心周りの外力のモーメント
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並進座標系とは、静止座標系に対し座標軸の方向が同じで原点の位置だけが異なる座標系のこと。↩