剛体の回転運動方程式への道①:速度の外積表示
剛体の回転運動方程式への道という続き物の記事を書くことにした。
これらの記事では、剛体の回転運動方程式を導出し、またそれがどのような条件下で成り立つかを明らかにしたい。
剛体の回転運動方程式への道①:速度の外積表示 - 理系大学生のブログ(この記事)
剛体の回転運動方程式への道②:慣性テンソル - 理系大学生のブログ
剛体の回転運動方程式への道③:回転運動方程式 - 理系大学生のブログ
座標回転行列
静止座標系に対して、原点を同じくし、座標軸の向きだけが異なる回転座標系を考える。
の基本単位ベクトルを、の基本単位ベクトルを
とする。
どちらも静止座標系上で表現したベクトルである。
(縦ベクトルで表現されているものとする。)
ここで
となるような行列を考える。このをこのブログでは座標回転行列と呼ぶことにする。
回転行列と似ているが微妙に異なるためこの名前を使うことにした。(2020/02/21追記)座標回転行列は回転行列の一種である。
座標回転行列は以下のような性質がある。 まず、
これはがの第成分を表していることから明らか。
よって
最後の等号は成分がであることより成立。
ゆえには直交行列で以下を満たす。
また、ある点の、静止座標系上で表現された位置ベクトルと回転座標系上で表現された位置ベクトル の間には以下のような関係がある。
速度の外積表示
回転座標系に固定した点の静止座標系から見た速度を知りたい。
点の位置が回転座標系上において
と表されるとする。(静止座標系上の表現ではないことに注意。)
回転座標系の基底を時間微分したベクトルもまた、回転座標系の基本単位ベクトルの線形結合で表されるから
とすると
よって
ここでとした。よって
は直交行列より。よって
が交代行列であること、すなわちを示す。は直交行列より
行列積の微分の性質より上の式は
ここでより
が交代行列であることが示せた。ゆえにの独立な成分は3つで、を
とおくことにする。
点の静止座標系上で表現された位置ベクトルは
点の速度は式(1)より
ここで、とした。
回転行列と外積に関するある定理を紹介する。この定理は座標回転行列に関しても成り立つ。
定理
を回転行列、を三次元ベクトルとすると以下の式が成り立つ。
式(2)についてが座標回転行列ならも座標回転行列だから
ここで、とした。を回転ベクトルと呼ぶことにする。
以上より、原点を同じくしながら回転する座標系に固定した点の速度ベクトルを、回転ベクトルと その点の静止座標系で表現された位置ベクトルの外積で表現することができた。
参考
http://www.core.kochi-tech.ac.jp/m_inoue/work/pdf/math_tale/03.pdf
・植松恒夫『力学』学術図書出版社