対数の計算をする際の注意(積の対数を対数の和に分解する公式の前提条件)
次の式変形は正しいだろうか?
答えを言うと正しくない。
反例はのとき、左辺はであるが、右辺は対数の中身が負の数になり定義できなくなる。
正しくない理由
この式変形は、
という対数に関する公式を利用したものだと思われるが、公式を適用できる条件を忘れたため間違ってしまった。 この公式が、常に等号が成り立つことを保証しているのはのときのみである。
同様に、
などの公式も、という条件が必要である。
正しい変形
公式が使えるように、対数の中身を正の数のべき乗に書き直すと、
これが正しい式変形である。*1 (ちなみに1行目右辺の対数の中身が0でないことは、変形前の式の値が定義できることから明らか。)
まとめ
対数の中身に積や商があるときに、対数を和や差の形に分解する公式は積や商の構成要素が正になっているように変形してから用いる。
*1:ある数の2乗のルートには絶対値がつくのと似ている。