平均誤差半径(CEP)と目標に当たる確率
平均誤差半径、または半数必中界(CEP)とは、ミサイルや爆弾の命中精度の指標であり、着弾点の分布が 円形正規分布に従うとしたとき、平均弾着点を中心とし、その円内に着弾する確率が50%になる円の半径のことである。 目標の半径がわかっているとき、平均誤差半径をつかって弾が目標に直撃する確率を求めたい。
地平と重なるように直交する軸、軸をとる。弾着点をとし、との誤差が互いに独立で、 かつ分散が等しいとき、弾着点は円形正規分布に従う。このとき、およびの分散を、また を平均弾着点とすれば、 弾着点の分布の確率密度関数は以下のようになる。
簡単のためとすると、
CEPをとすると、その定義から
これが0.5に等しいので
円形の目標の半径をとし、目標の中心を狙ったとき(平均着弾点が目標の中心のとき)、目標に直撃する確率は
先ほどと同様に計算すると
これを変形して
式(1)より
まとめ
平均誤差半径を、目標の半径をとしたときに、目標の中心を狙って目標に弾が直撃する確率は
確率は平均誤差半径と目標の半径の比で決まる。例えば目標の半径がCEPの半分であったとき、確率は (であるから)
約16%。
参考にしたサイト
剛体の回転運動方程式への道①:速度の外積表示
剛体の回転運動方程式への道という続き物の記事を書くことにした。
これらの記事では、剛体の回転運動方程式を導出し、またそれがどのような条件下で成り立つかを明らかにしたい。
剛体の回転運動方程式への道①:速度の外積表示 - 理系大学生のブログ(この記事)
剛体の回転運動方程式への道②:慣性テンソル - 理系大学生のブログ
剛体の回転運動方程式への道③:回転運動方程式 - 理系大学生のブログ
座標回転行列
静止座標系に対して、原点を同じくし、座標軸の向きだけが異なる回転座標系を考える。
の基本単位ベクトルを、の基本単位ベクトルを
とする。
どちらも静止座標系上で表現したベクトルである。
(縦ベクトルで表現されているものとする。)
ここで
となるような行列を考える。このをこのブログでは座標回転行列と呼ぶことにする。
回転行列と似ているが微妙に異なるためこの名前を使うことにした。(2020/02/21追記)座標回転行列は回転行列の一種である。
座標回転行列は以下のような性質がある。 まず、
これはがの第成分を表していることから明らか。
よって
最後の等号は成分がであることより成立。
ゆえには直交行列で以下を満たす。
また、ある点の、静止座標系上で表現された位置ベクトルと回転座標系上で表現された位置ベクトル の間には以下のような関係がある。
速度の外積表示
回転座標系に固定した点の静止座標系から見た速度を知りたい。
点の位置が回転座標系上において
と表されるとする。(静止座標系上の表現ではないことに注意。)
回転座標系の基底を時間微分したベクトルもまた、回転座標系の基本単位ベクトルの線形結合で表されるから
とすると
よって
ここでとした。よって
は直交行列より。よって
が交代行列であること、すなわちを示す。は直交行列より
行列積の微分の性質より上の式は
ここでより
が交代行列であることが示せた。ゆえにの独立な成分は3つで、を
とおくことにする。
点の静止座標系上で表現された位置ベクトルは
点の速度は式(1)より
ここで、とした。
回転行列と外積に関するある定理を紹介する。この定理は座標回転行列に関しても成り立つ。
定理
を回転行列、を三次元ベクトルとすると以下の式が成り立つ。
式(2)についてが座標回転行列ならも座標回転行列だから
ここで、とした。を回転ベクトルと呼ぶことにする。
以上より、原点を同じくしながら回転する座標系に固定した点の速度ベクトルを、回転ベクトルと その点の静止座標系で表現された位置ベクトルの外積で表現することができた。
参考
http://www.core.kochi-tech.ac.jp/m_inoue/work/pdf/math_tale/03.pdf
・植松恒夫『力学』学術図書出版社
質点系の角運動量・モーメントに関する定理まとめ
質点系の角運動量とモーメントに関する定理は数が多いので、ここで整理したい。
定理1
質点系の角運動量は、重心の角運動量と重心に対する質点系の相対的な運動の角運動量の和に等しい。
を質点系の角運動量、を重心の角運動量、を重心に対する質点系の相対的な運動の角運動量とした。
証明
定理自体の証明の前に、重心に関する定理を紹介しておく。質点の静止座標系における位置ベクトルを、 重心の位置ベクトルをとし、重心を原点とする並進座標系1における質点の位置ベクトルをとする。つまり、
となっているとする。 このとき
が成り立つ。これが重心に関する定理である。証明は以下の通り。
式(3)について、式(2)より
とした。ここで、
より
式(3)が示された。式(4)も全く同様に示される。
さて、この重心に関する定理を踏まえて定理1を証明していく。 式(1)(2)より
上の第二項と第三項は式(3)式(4)よりゼロとなる。故に、
定理2
質点系の外力のモーメントは、重心に全外力をかけたモーメントと重心周りの外力のモーメントの和に等しい。
を質点系の外力のモーメント、を重心に全外力をかけたモーメント、を重心周りの外力のモーメントとした。
証明
定理3
質点系の角運動量の時間変化は外力のモーメントに等しい
証明
第一項はゼロ、第二項は質点に関する運動方程式
(質点にかかる外力を、質点に質点からかかる内力をとした。) より書き換えられ、
上の第二項目について
作用反作用の法則
より
より第二項はゼロになる。 故に
定理4
重心の角運動量の時間変化は重心に全外力をかけたモーメントに等しい。
証明
第一項はゼロ、第二項の右側は質点系の運動量の時間変化に等しく、よって外力の総和に等しい。
定理5
重心に対する質点系の相対的な運動の角運動量の時間変化は重心周りの外力のモーメントに等しい 重心原点の並進座標系上では慣性力を考えずに定理3の式を立てることができる。
証明
定理1、2、3より
定理4の式と辺々ひいて
まとめ
:質点系の角運動量、:重心の角運動量、:重心に対する質点系の相対的な運動の角運動量
:質点系の外力のモーメント、:重心に全外力をかけたモーメント、:重心周りの外力のモーメント
-
並進座標系とは、静止座標系に対し座標軸の方向が同じで原点の位置だけが異なる座標系のこと。↩
一様に働く慣性力が剛体の重心にかかると見なしてよいことの証明
静止座標系に対して等加速度で移動する並進座標系から見たときに、剛体に働く慣性力を考える。 剛体全体に空間的に一様な加速度によって働く慣性力を一つの力と見なせたとすると、その力はどのようなベクトルだろうか。その作用点はどこだろうか 。
まず、ある複数の力と別の複数の力が等価であることの定義を述べる。と が等価であるとは
が成り立つことである。ここで、をの作用点とした。(プライム付きも同様。)
さて、慣性力と等価な一つの力のベクトルをとし、その作用点をとする。 剛体の微小部分にの慣性力が働いているとする。よって、
上の第一式より
よって第二式は
は重心に他ならない。よってに置き換えると
ゆえに
以上より、慣性力と等価な力は、ベクトルで表され、その作用点は重心を通りベクトルを方向に持つ直線上の 任意の点であることがわかった。このとき重心はによらず常に作用点になりうる。
まとめ
剛体に空間的に一様な加速度によって働く慣性力は、重心にある全質量に等しい質量を持つ質点に働く慣性力と等価である。
以上の議論は空間的に一様に質量に比例する力であればなんでも成り立つ。たとえば、重力についても同じことがいえる。 (重心の定義の仕方によっては明らかかも知れないが。)
今回は並進座標系を扱ったが、回転座標系における遠心力やコリオリ力などの慣性力は、重心に働く力とは一般にはみなせないことに注意する。とくに、 この証明における計算では証明できない。これは、 これらの慣性力を生み出す加速度が、空間的に一様には働かず剛体の微小部分の 位置に依存するため積分において外に出せないからである。もっと言うと、回転による慣性力は一般には重心に働く力とはみなせない。 *1
以下のサイトを参考にした。
2020/11/19 微修正
2020/11/25 微修正
*1:この命題の否定の反例はまた記事にしたい。
はてなブログでの数式を含んだ記事の書き方
はてなブログでLaTeXが使えると聞いて、始めてみたものの最初はなかなかうまくいかなかった。調べても解決法をすぐには見つけられなかったが、ようやくうまくいく方法を見つけたのでメモしておく。
僕がした失敗
まず、僕が書きたかったものをここに示しておく。
最初は見たままモードで試行錯誤していた。
[tex:\displaystyle{(LaTexのコード)}]
で数式が書けると聞いていたので見たままモードに
[tex:\displaystyle{ \boldsymbol{A} = \left( \begin{array}{cccc} a_{11} & a_{12} & \ldots & a_{1n} \\ a_{21} & a_{22} & \ldots & a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1} & a_{m2} & \ldots & a_{mn} \end{array} \right) }]
とかいてプレビューを見てみたが、が太字になってくれなかったり、そもそも等式にならなかったりと散々だった。 その後ググりながらいろいろやってみたが、全くうまくいかないのでMarkdownモードを試してみることにした。 Markdownは使ったことがなかったが、書き方がシンプルだったので(少なくとも普通の文書を書く時には)なんとかなりそうだと思った。 そして、上のコードをMarkdownモードで入れてみた。すると以下のように表示された。
[tex:\displaystyle{ \boldsymbol{A} = \left( \begin{array}{cccc} a{11} & a{12} & \ldots & a{1n} \ a{21} & a{22} & \ldots & a{2n} \ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \ a{m1} & a{m2} & \ldots & a_{mn} \end{array} \right) }]
全くうまくいっていない。
見つけた解決策
もうあきらめようかと思っていたが、グーグルで解決策を探していると以下の記事を見つけた。
このブログで、コードを
<div>コード</div>
のように挟むという解決策が紹介されていた。 その通りに以下のコードをMarkdownモードで入力してみた。
<div> [tex:\displaystyle{ \boldsymbol{A} = \left( \begin{array}{cccc} a_{11} & a_{12} & \ldots & a_{1n} \\ a_{21} & a_{22} & \ldots & a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1} & a_{m2} & \ldots & a_{mn} \end{array} \right) }] </div>
すると冒頭に示したように、以下のような出力がされた。
書きたいものを書くことができた。このブログの人には本当に感謝したい。 ブログに数式を書こうと思ったが、同じ問題で躓いてしまった人の助けになれば幸いである。
結論
texコードは
<div></div>
でかこめ。
追記
数式を中央寄せしたいときは
<div align="center">[tex:\displaystyle{ \boldsymbol{v}=\frac{d\boldsymbol{r}}{dt} }]</div>
のように書けば
と表示される。
参考:
7shi.hateblo.jp